輸入盤DVDでバレエを観よう！
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　「マノン」 は、「ロミオとジュリエット」に並ぶケネス・マクミラン振付の文学バレエの傑作です。どちらも10代の少女の恋を描いた悲劇ですが、初恋の甘い喜びを全身で表現する純真なジュリエットに対し、マノンは享楽的でモラルのない美少女。 “マノン” という名前は、男を迷わせる魔性の女の代名詞のようになっています。
　原作はアヴェ・プレヴォーの小説 『騎士デ・グリューとマノン・レスコーの物語』 。
　このマノン、ノイマイヤー振付のバレエ 「椿姫」 では、マルグリットを苦しめる幻影として登場します。 もうずいぶん前、私は 「椿姫」 を読んだすぐ後、連鎖的に （ 「椿姫」 は、アルマンがマルグリットに贈った 『マノン・レスコー』の本が競売にかけられる、というところから始まります。） 「マノン・レスコー」の小説を読んだことがあるのですが…  メロドラマ的ストーリーの 「椿姫」 と比べると、「マノン・レスコー」の方は、主人公たちが容赦なく追い詰められていくので、読んでいて辛い、というより、怖かった。 ヒリヒリと焼け付くような読後感が残りました。なので、「マノン・レスコー」が、オペラだけではなく、バレエにもなっている、と知ったときはちょっとビックリ。バレエが描く幅広い世界を知ることにもなりました。
　バレエの音楽は、オペラからの転用ではなく、ジュール・マスネ の他の作品をつなぎ合わせたものです。
パッチワークのような構成ですが、あつらえたかのようにドラマの流れにしっくり合っています。 「寝室のパ・ド・ドゥ」で流れる曲は特に印象的。 このパ・ド・ドゥはガラ公演でもよく踊られているので、ディアナ・ヴィシニョーワ、ポリーナ・セミオノワが演じるマノンも映像化されています。
　全幕のDVDが出ている英国ロイヤル・バレエのタマラ・ロホによると、マノンの恋人デ・グリューは偽善者なのだとか…　手厳しいけれど、鋭い指摘かも。 そのデ・グリューは、ロイヤル・バレエ往年のダンスール・ノーブル、アンソニー・ダウエルの当たり役です。1982年のこの舞台映像も廉価版で再販されているので、新旧のロイヤルの映像を見比べて見るのも面白いと思います。

→  『マイ・ベスト・セレクション Great Dancers of Our Time』 （ヴィシニョーワ&マラーホフ「マノン」収録）
→  『ディヴァイン・ダンサーズ Divine Danscers』 （セミオノワ&ゼレンスキー「マノン」収録） 

  (2012.7.2.)